グローバルな対話と公正性を支えるプラットフォームの提供

地域に根ざした研究成果の発信拠点

Q3およびQ4ジャーナルは、中低所得国(LMICs)の研究者を支えるうえで重要な役割を果たしており、より高ランクのジャーナルでは掲載が難しい研究に対しても、包括的かつアクセスしやすい発表の場を提供しています。Q1およびQ2ジャーナルが新規性や大規模な研究を重視する傾向がある一方で、Q3およびQ4ジャーナルは、アクセスの容易さ、研究者への支援、そして包括性に重点を置いており、地域固有の喫緊の課題や実務的な問題に取り組む小規模な研究にも発表の機会を提供しています。

たとえば、AIDS Research and Therapy には、限られた資源と資金のもとで研究を行っているアフリカの研究者からの投稿が多く寄せられています。同誌の編集チームは、こうした著者に対して個別に対応した支援を行い、原稿のブラッシュアップをサポートすることで、彼らの研究がよりアクセスしやすく、かつ実効性のあるものとなるよう努めています。

「私のもとに届く論文のうち、約50%はすぐに返信して、簡潔なブリーフ・コミュニケーション形式にまとめるための指示を添えています。(中略)これは、英語を母語としない人にも読みやすくするためです。論文が簡潔かつ明確であることは、著者にとっても、読者にとっても有益です」

Patricia Price

AIDS Research and Therapy 編集長

これらの研究は、学術界を超えて関心を集めることも多く、当該地域で活動する実務者や政策立案者にとって、直接的な利益をもたらすものです。Price氏は、こうしたジャーナルにおける実行可能で文脈に即した研究の重要性を強調し、「私はいつも、治療対象となる集団を明確に記述する必要性を強調しています」と述べています。このことからわかるように、地域に根ざした実践的な課題に取り組むことで、AIDS Research and Therapy のようなQ3およびQ4に位置づけられるジャーナルは、特定のコミュニティーが直面する現実的な課題の解決に貢献しています。また、AIDS Research and Therapy が行っているメンタリングや指導への取り組みは、コミュニティーからも高く評価されています。

シュプリンガーネイチャーが毎年実施している編集の質に関する調査では、90%以上の著者が「編集上のアドバイスが論文の改善に役立った」「査読プロセスが適切に管理されていた」と 回答しています。

一方で、「専門性の高い分野 」でも述べられているように、これらのジャーナルは、中低所得国(LMICs)における研究活動の現実、たとえば小規模なサンプルサイズや限られた研究資源といった制約に対応しています。こうした制約に適応しつつも、厳格な品質基準を維持することで、グローバルな対話を促進し、これまで十分に評価されてこなかった研究コミュニティーからの貢献を可能にするうえで、重要な役割を果たしています。

AIDS Research and Therapy のようなオープンアクセス(OA)ジャーナルに研究を発表することで、LMICs(中低所得国)で活動する実務者にまでリーチが広がり、研究の影響力をさらに高めることが可能になります。こうした地域では、多くの研究機関や個人が購読型ジャーナルにアクセスする余裕がないのが現状です。編集長の Barbara Castelnuovo 氏は、「アフリカで3人しか読めないジャーナルに出版しても、インパクトは生まれません」と述べています。OAによって、地域に根ざした文脈に即した研究が、実務に影響を与えることが可能になるのです。

キャリア初期の研究者(ECR)を支援する

Q3およびQ4に位置づけられるジャーナルは、Q1やQ2ジャーナルに論文を掲載するためのリソースや経験が十分でない研究者に対して、貴重な発表の機会を提供しています。こうした支援は、特に博士課程の学生や初めて論文を執筆する著者など、キャリア初期の研究者(Early Career Researchers, ECRs) にとって大きな意味を持ちます。アクセシビリティと研究者への支援を重視するこれらのジャーナルは、学術出版への入り口としての役割を果たしており、研究者が論文を改善するための助言やフィードバックを提供することで、研究キャリアの発展を後押ししています。

AIDS Research and Therapy のようなジャーナルは、こうした若手の著者と共に取り組んでいます。編集長の Barbara Castelnuovo 氏は次のように述べています。「初めて論文を発表しようとしている人たちにとって、これは大きなチャンスです。興味深い研究をしていても、それをどうまとめればよいのかわからないことがあります。私たちは、ただ却下するのではなく、どうすれば論文を改善できるかを伝え、再投稿を促すようにしています」。

これらのジャーナルは、支援的な出版の場を提供するだけでなく、若手研究者に必要なスキルを育む役割も担っています。AIDS Research and Therapy の編集長 Patricia Price 氏は、若手医師の研究スキル育成について次のように述べています。「著者の多くは若い医師だと思います。良い論文とは何かを理解し、統計を正しく読み解き、解釈可能な統計を使えるようになることが重要です」。このようにして、 ジャーナルはキャリア初期の研究者が将来的に分野に貢献できるよう、準備を支えています。

Q3およびQ4に位置づけられるジャーナルは、包括性と支援を重視することで、多様なバックグラウンドを持つキャリア初期の研究者(ECRs)に、自身の分野に貢献し、スキルを伸ばし、研究者として成長する機会を与えています。