まとめ


ジャーナルのランキングシステムは、もともと図書館が購読すべきジャーナルを選定するための参考として設計されたものでした。13 しかし、現在の研究評価においてJIFに過度に依存することは、評価の限界を示しています。14ランキングはジャーナルの影響力を示す一つの視点ではありますが、ジャーナルが著者や読者のコミュニティーに対して果たしている役割を十分に捉えるものではありません。15
本白書は、Q3およびQ4に分類されるジャーナルが、専門性の高い研究、漸進的な研究、そして学際的な研究を、グローバルな読者に届けるうえで果たしている重要な役割を果たしていることを示しました。
Q3およびQ4ジャーナルの高く、かつ拡大し続ける利用実績は、確立された分野と新興分野の双方に対して、これらのジャーナルが価値を提供していることを示しています。研究者、研究機関、そして国際的な研究コミュニティーは、上位ランクのジャーナルでは必ずしも優先されない多様な視点や基盤的な研究にアクセスするために、これらのジャーナルを活用しています。
Q3およびQ4ジャーナルは、包括性があり多様性に富んだ研究環境の推進にも優れており、LMICs(低・中所得国)、ニッチな分野、新興領域で行われた価値ある研究が、より広範な読者層に届くよう支えています。これらのジャーナルは、キャリア初期の研究者(ECRs)にとっても不可欠な存在であり、初めての論文発表の機会を提供するとともに、研究および出版に必要なスキルの習得を後押ししています。また、地域やローカルな課題に根ざした研究も積極的に支援しています。さらに、これらのジャーナルの影響は学術界にとどまらず、医療などの分野において、実践に結びつく知見が政策や現場の意思決定に活用されることも少なくありません。
13 The Journal Impact Factor: A Brief History, Critique, and Discussion of Adverse Effects
14 San Francisco Declaration on Research Assessment
15 シュプリンガーネイチャー(2025年4月)。The state of research assessment: Researcher perspectives on evaluation practices.

Q3およびQ4ジャーナルのリーチと影響力を広げるうえでのオープンアクセス(OA)の役割
シュプリンガーネイチャーは、JIFや被引用数といった指標への過度な依存から脱却することを目指すDORA(研究評価に関するサンフランシスコ宣言)の署名機関として、その理念を実際の出版活動に反映させています。OAへの移行を進める中で、すべてのジャーナルがランキングにかかわらず、より広範なアクセスを提供し読者が恩恵を受けることが、これまで以上に重要であると考えています。特にQ3およびQ4ジャーナルにとって、OAは、グローバルな知識共有の促進、学術界を超えた研究成果の普及、そして限られたリソースのもとで活動する 研究者や実務者のニーズに応えるうえで、他にはない利点をもたらします。
本白書で取り上げた AIDS Research and Therapy をはじめとするジャーナルは、すべての研究におけるオープンアクセス(OA)の可能性を強く示しています。購読型ジャーナルへのアクセスが限られている中低所得国(LMICs)において、OAは地域発の研究が実務に影響を与えることを可能にしています。OAの重要性は、単にアクセスのしやすさにとどまりません。現在では、多くの 研究資金提供機関が、研究成果を最大限に活用・共有できるよう、公開を義務づける傾向が強まっており、OAはそうした期待にも応える手段となっています。
より公平で包括性のある研究環境の実現に向けて
グローバルな研究コミュニティー全体に恩恵をもたらす、より公平な研究環境を育むためには、ランキングに基づく単一の評価軸から脱却し、実社会への影響といった、より広範な社会的評価を取り入れる必要があります。本白書が示すように、Q3およびQ4に分類されるジャーナルは、包括性を促進し、新たに台頭しつつある研究者や、これまで十分に評価されてこなかった多様な立場の声を支え、地域特有の課題にも取り組んでいます。妥当性が確認されたすべての研究が、正当に評価され、発展の場を得られるようにしなければなりません。


この白書を引用する際は以下をご利用ください。
Springer Nature (2025, April). Demonstrating journal value beyond rankings. https://stories.springernature.com/value-of-q3q4-journals/index.html